以下、抜粋です。
人間の本当の姿は「高次の人格」です。いかに病んでいるように見えても、病んでいるのは衝動であって、本当の姿はまったく病んでいないのです。そのようにクライアントを見ることが、治癒力をもたらす関係性を築くうえで重要であることは、すでに述べた通りです。本章では、この点について、さらに踏み込んだ考察をしてみたいと思います。
高次の人格とは、生命であり、ある種のエネルギーであり、意識そのものです。一般的に考えられているように、肉体が、意識や生命を生み出したのではありません。意識や生命は、肉体とは別次元の存在なのです。
こうした考え方は、「生気論(せいきろん)」と呼ばれています。生気論とは、「生命現象には物理や化学の法則だけでは説明できない原理や活力がある」という説のことです。(p.104「第三章生命は時空を越える」より)
このように、治療者の想念というものは、非常に重要な意味を持ってくるのです。治療者自身が暴走した衝動に振り回されていれば、クライアントを癒すことがそれだけ難しくなるでしょう。それどころか、状態を悪化させてしまうかもしれません。まるで放送局のように、五感では知覚されない影響力を、私たちは常に放っているのです。
したがって、治療者は、まずは自らの衝動を健全にし、高次の人格の支配下に置くようにしなければなりません。すなわち、常に生命ベクトルを発揮するようにしなければならないのです。そうすることで治療者は、クライアントの生命ベクトルを活性化させることができるのです。
これは重要なことなので、もう少し詳しく考察してみましょう。
(p.128 第三章生命は時空を越える)
たとえば、あなたが工夫と努力を傾けて誰かを助けることに成功し、共存関係を築いたときには、その体験から得た情報(他者と共存関係を築くための知恵)は、ゼロ・ポイント・フィールドを通して人類すべてに伝達され、他の人が他者と共存関係を築くのを支援していると考えられるのです。
また、他者と共存するために、自分の個性や才能を伸ばしていったなら、その経験も貴重な情報として、他者が自分の個性を伸ばしていくのを助けていると思われます。
私たちは、このようにして、二つの生命ベクトルを発揮するための情報(知恵)を獲得し、それを他者と共有する働き(欲求・使命)を持っていると考えられるのです。
このことは、個人の生き方というものは、ダイレクトに世界の状況を左右する影響力を放っていることを示しています。たとえば善い生き方をすれば、それだけで、他の人が善い生き方をするのを助けていることになり、世界を善いものにしていることになるわけです。
進化のためには、あらゆる体験や学びが必要です。一人ですべての体験や学びをすることは不可能ですから、生命はみんなで協力し、分担して独自の体験をし、そこから各自が学び、そして学んだ知恵を「共有財産」として集め、蓄積させているのです。
(p.133 第三章生命は時空を越える)
これを実際の臨床に当てはめていえば、クライアントは治療者から、一方的かつ受動的に治療を受けるだけの存在であってはならず、クライアント自身も、能動的に他者や世界に働きかけていかなければならない、ということになります。治療者からクライアントへ働きかけるだけでなく、クライアントもまた、能動的な姿勢で治療者に働きかけていくことが求められるのです。
そして、そうしたクライアントの能動的な姿勢は、クライアントが治療者を敬愛するという形として現れてこなければなりません。
なぜなら、一方的に敬愛されるだけでなく、敬愛し合う関係性こそが、秩序ある関係性と言えるからです。そうした関係性から「秩序を創造していく世界観」が生まれてくるのです。
敬愛とは、すでに解説したように、尊敬と愛がひとつになったものです。私たちは、自分にはないすぐれたものを持っている人に尊敬の念を覚え、尊重します。こうした気持ちが生じるのは、生命の多様化ベクトルが活性化されたからです。
多様化と共存化という二つの生命ベクトルを活性化することが治癒の根本原則です。したがって、治療者とクライアントは、尊敬し合うこと(多様化ベクトルの活性)、そして愛し合うこと(共存化ベクトルの活性)、すなわち、敬愛し合うことが求められるのです。
そして、敬愛し合うことこそが、世界に秩序を創造する行為となるのです。
では、どうしたら、治療者はクライアントから敬愛してもらえるでしょうか。
(中略)
よき治療者は、必ず「よき教育者」の側面を持っているものです。
よき教育かどうかは、完全かどうかではなく、完全をめざしていく情熱があるかどうかで決まるのです。
(p.234~235第6章 いかにして治癒をもたらす関係性を築くか)
以上、【愛は治癒力を活性化する/斉藤啓一 著】
ホメオパシー出版 http://homoeopathy-books.co.jp/
定価1600円(外税)
広い意味で、
学校の先生も生徒を癒す治療者であり、
お母さんやお父さんも子供を癒す治療者であり、
会社の上司も部下を導き癒す点で治療者であり、
その逆もあるはず。
みんなが治療者であり、クライアントである人間関係を、
さらに意味があり、よりよいものにしてゆくための
すばらしい参考書だと思いました。
ぜひ、ご一読を♪