先日も書きましたが、
犬丸りんさんの訃報を12年間も
知らずに生きてきてしまいました。
知っていたからといって
何をするわけでもないのですが
いつの間にか大切なものをなくしていたことに気づいて
いてもたってもいられず
古本屋さんで見つけた本を取り寄せて
読みました。
【偏愛】という短編集です。
この本を何故知らなかったのか。
それは、母を亡くし、子どもを産んだ
数秘でいうところの33の年の次の年で
バタバタとしすぎており
趣味に時間が全くとれない時期だったのでした。
時を経て
昨夜ゆっくり読みました。
テーマとしては
ずっしり重いものばかりですが
犬丸りんさんの慈愛というか、
悲しみを含んだ優しさやユーモア、エロスもタナトスも一緒のテーブル上にあって。塩と胡椒みたいに普通に。
悪人は誰もいなくて
善人ぶる人も誰もいなくて、
しんとしたあたたかいものが遺る短編集でした。読後感はすこしジリジリするような気もします。
初版が1998年でしたから
とらばーゆ、とか
懐かしい言葉も出てきて面白かったです。
そんな言葉も
古くなくて
違和感なく読ませてしまうのは
すごいなあ、と思います。
犬丸りんさんのことみたいな
デパートを実家とする女の子の話「日本橋デパート童子」。
すくわれたような、救えたのではないかという非常にあまったれた、後悔を覚えるような、
一言では片付かない気持ちになりました。
「おいしいパン屋の息子たち」もよかった。
すべてよかったです。
りん、という名前の
インコを飼いたくなりました。
真ん中の本棚の
エッセイ本コーナーに置いています。
つめたいコーヒーと一緒に
ぜひご一読を。
ああ、もっと犬丸りんさんの本を
読み続けたかった。
この気持ちはどうすれば。
でも、すばらしい作品をたくさん産み出してくださり
ありがとうございました。
ネットにあった犬丸りんさんの顔写真、多分別人ではないでしょうか。文庫本「んまんま」の帯に
ご本人のお写真があるのですが、ネットの写真はお顔が違うようなので。ご本人はアナウンサーの夏目三久さんに似ていらっしゃる。