カフェモンサンルー

2015/07/27

その3:悲しいことは全部「うつ」?!

続きです。
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日本で抗うつ薬市場を急拡大させたのは、
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の「パキシル」を開発したグラクソ・スミスクライン社であると目されている。
パキシルは、日本では2000年に
「うつの特効薬」という触れ込みで発売された。
1999年まで、日本のうつ病患者は
およそ43万人で横ばいだった。
しかし、パキシルの登場を境に患者数はぐんぐん増加。
三年後の2002年には一気に70万人を突破し、
2005年に当初の二倍以上となる92万人に達した。
これと並行して、抗うつ剤の売り上げは10年あたりで五倍以上に増えている。
(グラフ参照:写真)

「この不自然な患者数の増加は、日本だけで起きているものではありません。
アメリカ本国、イギリス、北欧、最近では南米や中国でも、
抗うつ薬の発売をきっかけとしてうつ病患者が激増しています。
特に中国では、2012年の一年間だけで抗うつ薬の売り上げが22.6%も伸びました。
中国もまもなく、年間1000億円規模の『メガ・マーケット』になると見込まれています。」(前出・ウォッターズ氏)

製薬会社は具体的に、どのような戦略で

「患者を増やす」

のだろうか。
筑波大学教授で精神科医の斎藤環氏はこう語る。

「『疾病喧伝(しっぺいけんでん)』という言葉があります。
日本では、1999年のSSRI発売から展開された

『うつは心の風邪』キャンペーン

がその代表格で、これで精神科受診の敷居がぐっと下がりました。

今、『新型うつ』が問題になっていますが、
その土台を作ったのは製薬会社と精神科医なのです。
『うつの徴候かなと思ったら、すぐに病院に行きましょう』と言って、

単に悩んでいるだけの人や、何かあって傷ついたり悲しんでいるといった、以前なら病気とはみなされなかった人まで、
精神科を受診するよう促したのですから。」

本来は健康なはずの人にまで

「あなたは病気ですよ」と囁きかけ、病院に行かせてクスリを飲ませる。
失恋で落ち込むのも、家族を失った悲しみも、全部「うつ」………
まさにマッチポンプとしか言いようのないやり口だ。
前出の野田氏も言う。

「グラクソ・スミスクライン社は、パキシルの日本上陸の際、日本の精神科医を集めて

『日本人に抗うつ剤を飲ませるにはどうするか』を考える会議を開いています。

この直後、『うつは心の風邪』というキャッチコピーがうまれました。
さらにその後、自殺者数が増えると、チャンスとばかり『自殺の原因はうつ病です』と宣伝しはじめた。

日本の場合は、医薬品そのものの宣伝は規制されていますから、こうして病気のキャッチコピーをまず広めるのです。」

クスリは一般の商品とは違う。
医者は、治療に必要だからクスリを処方するのであって、カネ儲けのためではない——
そんな風に信じていたら、それこそ製薬会社の思うツボである。
彼らは、専門知識を持たない一般人の、病気に対する「考え方」をまず掌握するのだ。

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続きます。
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